超電導は夢ではなく既に実現された技術であり、本格的な普及期を迎える準備も整った。Y系高温超電導の産業化は進んでおり、MgB2(二ホウ化マグネシウム)やFe(鉄)系など新しい化合物による研究も盛んでいます。 超電導を応用した機器では、MDDS(Magnetic Drug Delivery System:磁気誘導型薬剤輸送システム)、 資源探査用超高精度センサーなど、電力インフラ以外の新たな用途への展開なども検討されています。 一方、リニア中央新幹線は2027年にいよいよ日本でも現実になります。子供向けのアニメの中で「透明なチューブの中を自動車が走る未来」が描かれることがあるが、超電導ケーブルを縦横無尽に張り巡らせ、 自動車にも超電導磁石が搭載されるようになれば、夢に見た未来の到来は近いのかもしれない。
超電導マグネットの応用において、磁場変化による発熱を抑えると同時に、発生磁場の均一化のためにシールド電流の影響を抑える必要があることを明らかにしています。この課題に対して、超電導線材のマルチフィラメント化は有望な解決方法であることが示されました。
当所はエキシマレーザー源を用いたRTRレーザースクライブ技術を開発しました。この技術により、レーザービームのエネルギー密度によってスクライブの深さを制御でき、スロット幅の精度も±2.5µmの範囲内で制御されます。また、長い超電導線材の安定した加工も可能です。
左図に示したように、5mm幅のReBCO高温超電導線材を10本に分割し、フィラメントIc値の均一性とIc低下を制御することに成功しました。さらに、スクライブされた試料の常磁性状態への磁気緩和時間が数時間に短縮されたことから、スクライブ技術は、発生磁場の均一性に対するシールド電流の影響を制御するためにも有用であることが確認されました。
超電導技術は、エネルギーシステムの高効率化や環境対応、新技術の創造など社会への貢献が期待されるキーテクノロジーの一つです。応用分野は広く、電力・エネルギー機器、産業応用機器、理化学機器、医療・福祉機器などに期待されます。最近は、高温超電導技術が注目され、 ReBCO高温超電導線材の市販化に伴い、同線材を利用した機器開発が盛んになっています。しかし、線材剥離、ホットスポット、遮蔽電流、保護方法、機械設計、熱設計、電磁設計、 コイル構造最適化などの課題があるため、当所ではこれらの課題の対策や技術開発に取り組んでいます。
高温超電導線材接続技術は、超電導応用技術の進展に必須の技術であり、高速鉄道、MRI、核融合炉など、様々な分野での応用においても重要な役割を担っています。
超電導線材を接続する方法には、複数の選択肢が存在します。一つは、超電導線材の銅層や銀層を接合する方法です。このために、溶接、はんだ付け、圧着、冷間圧着などの技術が開発されています。接合部においては、クリーン化、表面処理、接合圧力・温度の管理などが必要とされています。
一方、超電導層同士を直接接触させ、超電導層を直接接合する方法もあります。この方法は、より本質的な超電導接続を可能にするものであり、超電導デバイスや超電導線材の性能向上に寄与することが期待されています。しかし、実現には高度な技術と制御が必要とされ、今後の研究が進められる予定。